破産の受任通知のあと弁護士が辞任届を出したときの初動対応

2019年01月23日(水)

お金のない人は失踪することがある

 

全員そうだというわけではないですが、お金に困る人は、どこかに逃走する傾向があります。

 

過去私も、破産の依頼を受けたあと、その方が突如、どこかに失踪してしまい、連絡が全く取れなくなったということがありました。

 

そのような場合、弁護士としては、その破産案件を辞任せざるを得なくなるわけですが、債権者としては、その後、どのように行動したらいいかわからないと思います。

 

そこで、その初動対応について解説します。

 

まず、「受任通知」のあとはなぜ債権回収できないのか

まず前提として、受任通知が出たあと、債権回収ができない理由を説明します。

 

それは、破産したあと、受任通知後に回収したお金は、「否認権」という権利行使により、お金を持ち戻さなければなりません。

 

せっかくコストをかけて回収したのに、結局自分の手元にお金が入らないということがあるわけです。

 

そのような理由もあり、一般的には、受任通知後にお金を回収することはないのです。

 

※なお、貸金業者などについては、受任通知後に電話等で督促してはならないという法律もあります。

 

弁護士が辞任したということは、破産の可能性が低くなる?

結局、お金が手に入らなくなるのは、「破産」するからです。

 

弁護士が辞任したような場合は、たいがい、破産できなくなったということになります。

 

そのため、債権回収に手をだしても、そのお金を破産手続きのなかで戻さなければならなくなる確率も低くなるわけです。

 

そのため、辞任したとき、まずは、できる限り債務者の財産を調査し、お金を回収に着手すべきです。

 

補足:そもそも、取引先として、受任通知後に債権回収を止めないという選択肢はあるか

上述したように、取引先が受任通知後に債権回収を止めるのは、「結局、お金にならない」という経済的な理由になります。

 

回収をしても、刑罰が課されるわけではないです。

 

その点では、債権回収してしまうというのも、経営判断としては、あり得る場合もあるといえます。

(とくに、計画倒産だったり、回収しても証拠が残らなさそうだったりする場合。褒められたものではありませんが・・・)

 

弁護士 杉浦智彦

 

 

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