動産執行は大変だが、役立つこともある

2019年01月26日(土)

動産執行とは?

裁判にいざ勝訴しても、実際に債務者がお金を払ってくれない場合は、強制執行をしなければなりません。

 

不動産があれば強制的に売ってお金にしたり、銀行預金や給与債権を差し押さえたりするわけですが、

不動産がなかったり、または自営業で働いていなかったり、銀行口座にお金がないような場合には、動産執行を試みなければならないことがあります。

 

「動産執行」とは、言葉のとおり、土地建物などの不動産以外の「物」を差し押さえて、お金に変える手続きをいいます。

ドラマとかで、タンスに「差押物件」みたいな赤い紙がはられたりするシーンを見たことがあるかもしれません。あれが動産執行です。

 

動産執行はそんなに強くない?

ただ、実際のところ、動産執行はそれほど強い手段ではありません。その理由は、差し押さえられないものが多過ぎるためです。民事執行法には、次のとおり、差押えしてはならないものが列挙されています。

 

民事執行法(差押禁止動産)
第百三十一条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位はいその他礼拝又は祭に直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
なお、131条第3号の「金銭」の金額は、66万円になります。普通の人は、66万円以上の現金をおいている人なんかいませんよね・・・
つまり、タンスとか、冷蔵庫とかはもちろん、ほとんど差し押さえられないわけです。
実際に差押えができるのは、宝石・貴金属がある場合に限られるわけですね。
なお、先程ドラマで赤い紙がはられるという話をしましたが、実際のところ、そんなことはなく、業者を呼んで、その上で別の場所で保管するということがほとんどです。

交渉の材料には使える

ただ、動産執行の手続きには、執行官や、鍵をあける職人などが行くため、なかなか迷惑な行為になります。

 

そのため、その手続が入ったとき、債務者と協議したときに、限界に近い条件で和解をしてくれることがあります。

 

そのような和解を狙って動産執行をしたことも、私自身の経験としてあります。

 

 

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