破産免責後に支払督促を打つとどうなるか?

2019年02月27日(水)

破産免責されると、支払う義務がなくなる

通常、債務者が破産し、免責されると、債権者に対してお金を返す義務がなくなります(ただ、返しても、それを返金する義務はありません。これを難しい専門用語で「自然債務」といいます。)。

 

ただ、もし、破産免責された後、破産前の権利に基づいて、支払督促の申立てをすると、どうなるのでしょうか。

 

過去、裁判例があります。

 

三和ファイナンス事件(東京地裁平成20年2月29日判タ1319号206頁)

事案の概要

 本件は,消費者金融S社から金銭の借入れをしていた者が,免責許可決定が確定していたにもかかわらず,S社が上記借入金について支払督促の申立てをし,支払督促が債務者のところに送達されたため,精神的苦痛を受けたとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

 

結論

支払督促の申立て自体が違法だとして、5万円の慰謝料を認めた。

 

理由

「免責許可決定がされ,同決定が確定した後の破産者の債務は,訴えをもって履行を請求することによる強制的実現を図ることができなくなると解されるから,通常の民事訴訟手続に準ずる手続である督促手続においてもその満足を受け得ないことは明らかである。そうであるとすれば,当該債権について支払督促の申立てをすることは,法的手続によって正当な権利の実現を図るという裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠き,違法性が認められる。」

 

まとめ

破産して免責を受けたあとに、追撃をすることは、基本的には許されません。

 

ただ、一部の権利については「非免責債権」と呼ばれ、免責対象外だとして争うことは認められる余地があります。それは、支払督促ではなく、訴訟など(破産手続き中の流れによっては、強制執行をそのまま申し立てて、執行手続中の紛争になることもあります)で争わなければならないと思っていただくのがよいと思います。

 

 

 

 

 

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