仮差押がなされたあと、取り消されたり敗訴すると損害賠償義務がある?

2019年03月09日(土)

仮差押は効果が強いがリスクもある

前回お話した仮差押の続きです。

 

 

取引債権の仮差押えは勝負を決めてしまう?

仮差押は、取引にも影響がでるので、もしそれが後日否定された場合は、仮差押をしたほうが、損害賠償をしなければならないという話があります。

 

特例法があるわけではないですが、

「違法な仮差押というだけで、過失があることを一応推定する」という「過失の一応の推定」論というものがあり、実際上、(損害額は別にして)損害賠償義務があると思っていただいてよいかと思います。

 

その担保のため、仮差押のまえには、あらかじめ担保金を用意しなければならないのです。

 

最高裁の平成31年3月7日の判決は、損害との因果関係を否定したもの

ご存知の方もいるかと思いますが、仮差押(後日、保全の必要性がないとして、異議の結果却下された)によって、百貨店との取引がなくなったとして逸失利益の損害賠償を求めた(正確には、相殺主張)ものについて、判決がでました。(以下、最高裁HPより、当該判決のページ参照)

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88472

 

この裁判例も、過失があることは前提にしつつも、百貨店との取引が止まったこととの因果関係がないということで、逸失利益の賠償義務を否定しています。

 

しかしながら、この裁判例は、数日の間に仮差押がなくなっていたり、さらには、百貨店側が取引拒絶する理由に仮差押が上がっていなかったという事情もあるので、かならず損害賠償義務が否定されるというわけではありませんが・・・

 

弁護士 杉浦智彦

 

 

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